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【第3話】待ち続けた恋。幸せだったはずなのに、涙のほうがずっと多かった。

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【第3話】待ち続けた恋。幸せだったはずなのに、涙のほうがずっと多かった。

彼と出会って一年。

本気で彼を好きになってから、半年が過ぎていた。

最初は「好き」という気持ちだけで十分だった。

毎日LINEが来る。

「おはよう。」

「お疲れさま。」

「大好きだよ。」

その言葉だけで幸せになれた。

週に一度でも会えた日は、それだけで一週間頑張れた。

「今日は楽しかったね。」

「またすぐ会おう。」

そう言って笑う彼を見ていると、この恋は間違っていないような気さえしていた。

でも、その幸せは長く続かなかった。

帰る場所は、いつも私じゃなかった

デートが終わる時間になると、現実に引き戻される。

「そろそろ帰るね。」

その言葉を聞くたびに胸が締めつけられた。

帰る場所は、私の家じゃない。

奥さんと子どもが待っている家だった。

さっきまで隣で笑っていた人が、何事もなかったように家族のもとへ帰っていく。

私は一人。

玄関のドアを開けるたび、静かな部屋が迎えてくれる。

数時間前まであんなに幸せだったのに。

急に虚しさが押し寄せる。

孤独だった。

毎回そうだった。

「また一人になっちゃった。」

そう思うたびに涙が止まらなかった。

幸せより、不安のほうが多かった

恋愛って、本当はもっと楽しいものじゃなかったっけ。

好きな人と笑って。

手をつないで歩いて。

「また明日ね。」

そう言って普通に別れる。

そんな当たり前の恋愛がしたかった。

でも私たちは違った。

人目を気にして歩く。

会社の近くでは会えない。

知り合いがいそうなお店には入れない。

写真も自由に撮れない。

旅行なんて行けない。

イベントも堂々と過ごせない。

「誰かに見られたらどうしよう。」

そんな言葉が、いつも頭のどこかにあった。

好きな人といるのに、心から安心できた日は一度もなかった。

会社にも知られたくなかった

一番怖かったのは、会社の人に知られることだった。

彼は上司。

私は部下。

それだけでも噂になりやすい。

まして、彼には家庭がある。

会社で誰かと目が合うだけで、

「もしかして気づかれた?」

そんなことばかり考えてしまう。

少しLINEをしているだけでも不安。

休憩時間に話すだけでも周りが気になる。

誰にも言えない。

相談もできない。

後ろめたさを感じながら恋愛をすることが、こんなにも苦しいなんて思わなかった。

私が欲しかったのは、普通の恋愛だった

私は特別なことなんて望んでいなかった。

高級レストランもいらない。

ブランド物もいらない。

ただ、

手をつないで歩きたかった。

休日に堂々と隣を歩きたかった。

友達に「彼氏だよ」って紹介したかった。

誕生日を一緒に過ごしたかった。

クリスマスを一緒に迎えたかった。

みんなに

「お似合いだね。」

って言ってもらえる恋愛がしたかった。

隠れながら会う恋愛なんてしたくなかった。

私は、普通の恋愛がしたかっただけだった。

彼は、本当に動いてくれた

そんな私の気持ちを知っていたからなのか。

ある日、彼が言った。

「奥さんに話した。」

一瞬、時間が止まった。

「別れたいって伝えた。」

その言葉を聞いた瞬間、涙が出た。

やっと。

やっと動いてくれた。

信じてよかった。

そう思った。

でも現実は、私が想像していたものとは違った。

「今週末、家族旅行に行く」

その数日後だった。

彼が何気なく言った。

「今週末、家族旅行なんだ。」

私は聞き返した。

「え?」

「子どもの誕生日だから。」

「子どものために行く。」

頭の中が真っ白になった。

別れたいって伝えたんじゃなかったの?

家族旅行に行くの?

しかも子どもの誕生日を祝う?

理解できなかった。

何も言えなかった。

「子どものため。」

その言葉は間違っていないのかもしれない。

でも、私の心は納得できなかった。

その夜、一人で泣いた。

泣いてばかりの恋だった

気づけば、笑っている時間より泣いている時間のほうが長くなっていた。

「もう終わりにしよう。」

そう思う日は何度もあった。

この恋は苦しい。

幸せより、不安のほうが多い。

未来が見えない。

もう限界かもしれない。

そう思って彼に伝える。

でも、そのたびに彼は言う。

「お願いだから離れないで。」

「本当に好きなんだ。」

「君がいないとダメなんだ。」

電話越しに泣きそうな声で引き止められることもあった。

私は、その言葉に弱かった。

「もう少しだけ。」

「もう少し待てば。」

そんな期待を捨てられなかった。

だからまた戻る。

そしてまた泣く。

その繰り返しだった。

この恋は、本当に幸せなの?

私は毎日のように自分へ問いかけていた。

好き。

それは間違いない。

彼も私を大切にしてくれている。

それも伝わってくる。

なのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。

恋愛って、こんなに泣くものだったっけ。

「好き」だけで幸せになれるなら、私はもうとっくに幸せになっているはずだった。

でも現実は違った。

幸せな時間は、ほんの数時間。

その何倍もの時間を、不安と孤独で過ごしていた。

それでも私は、まだ彼の手を離すことができなかった。

好きだったから。

本当に好きだったから。

でも、この頃から少しずつ、私の心のどこかで別の感情が芽生え始めていた。

それは嫉妬ではなかった。

もっと冷たくて、もっと苦しい感情だった。

次回予告

彼は家族旅行から帰ってきた。

旅行の話を聞きながら、私は自分でも驚くほど冷静だった。

泣きもしなかった。

怒りもしなかった。

心に浮かんだのは、たった一つの感情。

「……気持ち悪い。」

恋が終わるとき、人は嫌いになるわけではない。

ある日突然、現実が見えてしまう。

【第4話】嫉妬じゃなかった。「気持ち悪い」と思った日。

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