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【第4話】嫉妬じゃなかった。「気持ち悪い」と思った日。

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【第4話】嫉妬じゃなかった。「気持ち悪い」と思った日。

「私は、待てる人じゃない。」

彼には何度もそう伝えてきた。

「待っていてほしい。」

そう言われるたびに、

「待てない。」

私は何度も答えた。

未来が決まっているなら待てる。

ゴールが見えているなら頑張れる。

でも、この恋には何一つ約束された未来がなかった。

だから毎日が苦しかった。

私とは正反対の人

彼は、本当に真面目な人だった。

仕事も真面目。

約束も守る。

誰にでも優しい。

怒鳴ることもない。

感情的になることもない。

職場でも「あの人が不倫なんて絶対しなさそう」と思われるタイプだった。

女性にも積極的ではない。

どちらかと言えば恋愛に不器用で、一人の人をずっと大切にするような人だった。

恋愛タイプで言うなら、まさに"忠犬ハチ公"。

だからこそ私は信じた。

こんな人が嘘をつくはずがない。

こんな人が遊びで近づくはずがない。

そう思っていた。

でも現実は違った。

「不倫なんて絶対しない。」

そう思っていた人が、今、私と不倫をしている。

その矛盾を、私はどうしても受け入れられなかった。

毎日、愛されている実感はあった

彼は本当によく愛情を伝えてくれた。

「かわいい。」

「大好き。」

「世界で一番好き。」

「オンリーワンだから。」

「誰にも取られたくない。」

「好きすぎておかしくなりそう。」

「息をしてくれてるだけでありがとう。」

「存在が愛おしい。」

そんな言葉を、照れることなく毎日伝えてくれた。

喧嘩をしても怒鳴らない。

私の気持ちを受け止めようとしてくれる。

どれだけ泣いても、最後まで話を聞いてくれる。

こんなに愛情表現をしてくれる人なんて初めてだった。

人を信じることができなかった私が、久しぶりに心を開けた相手だった。

だから好きになった。

いや。

彼が、私を好きにさせた。

でも、現実だけは変わらなかった

どれだけ「大好き」と言われても。

どれだけ「一緒になりたい」と言われても。

夜になると彼は帰っていく。

帰る場所は、私じゃない。

奥さんと子どもが待つ家だった。

それが毎日繰り返される。

私は一人。

彼は家族と過ごす。

この現実だけは、何一つ変わらなかった。

「奥さんに別れたいって伝えた」

ある日、彼は言った。

「ちゃんと話した。」

「別れたいって伝えた。」

その言葉を聞いたとき、本当に嬉しかった。

やっと前に進める。

そう思った。

でも数日後。

彼は何気ない顔で言った。

「今週末、家族旅行に行く。」

一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

「え?」

思わず聞き返した。

「子どものため。」

「これが最後の旅行になると思う。」

最後。

その言葉で納得できるほど、私は大人じゃなかった。

私には理解できなかった

別れ話をした直後に。

家族旅行へ行く。

しかも子どもの誕生日を祝う。

私は何度考えても理解できなかった。

本当に別れる人が、そんなことをするんだろうか。

本当に終わった夫婦が、旅行へ行くんだろうか。

「子どものため。」

その言葉は何度も聞いた。

間違っているとは思わない。

でも、私の心は納得しなかった。

何を言われても、もう信じられなかった

彼は必死だった。

「不安にさせないようにする。」

「旅行中もこまめに連絡する。」

「GPSも共有する。」

「安心してほしい。」

たくさん考えてくれていた。

でも違った。

私が欲しかったのはGPSじゃない。

連絡でもない。

旅行へ行かないという現実だった。

どれだけLINEが来ても。

どれだけ位置情報が見えても。

その瞬間、彼は家族と笑っている。

その事実は変わらない。

どうやって信じればいいの。

どうやって安心すればいいの。

気づけば、私の話じゃなくなっていた

話し合いをしても、最後はいつも同じだった。

「君はこうだから。」

「君は考えすぎ。」

「君も変わらなきゃ。」

もちろん、私にも悪いところはあったと思う。

でも私は、自分のことを責めてほしかったわけじゃない。

「傷つけてごめん。」

その一言が欲しかっただけだった。

気づけば、私の悲しみより、私の性格の話になっている。

そんな会話が増えていった。

嫉妬じゃなかった

旅行の日。

私は泣かなかった。

怒りもしなかった。

ただ、スマホを見ながら思った。

「気持ち悪い。」

嫉妬じゃない。

奥さんが羨ましいわけでもない。

家族旅行そのものを否定したいわけでもない。

ただ、

「夫婦としては終わっている。」

そう言いながら家族旅行へ行く。

その矛盾が、どうしても受け入れられなかった。

今まで信じていた言葉が、全部嘘に聞こえた。

そして初めて思った。

この恋は、幸せになるための恋じゃない。

苦しみ続ける恋なんだ。

それでも。

嫌いにはなれなかった。

悪い人じゃないことを知っていたから。

優しい人だと知っていたから。

少しでも好きという気持ちが残っている限り、私は離れられなかった。

でも、その「好き」は、少しずつ形を変え始めていた。

愛情ではなく、執着へ。

期待ではなく、諦めへ。

そして私は、人生で一番大きな決断をしようとしていた。

【最終話】「好き」だけでは幸せになれなかった。あの恋が私に教えてくれたこと。

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